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見たものと、読んだもの

1F 1800-1900 [2/2 犬とファンゴッホ][通常展4/9] @アムステルダム国立美術館

19世紀後半は、ちょっと政治から離れましょう。

犬ですよ、犬。現在のアムステルダムの街でも大小様々な犬が散歩させられていましたが、2次元の犬も、これがなかなかかわゆい。

犬の芸術

Portrait of a young woman, with "puck" the dog. (1879-1885) Thérèse Schwartze 

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ウィレム2世のと同じように、大型犬がご主人を見上げています。可愛い。

 

Two Mothers 1893年 Frans Stracké

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漁師の若奥さん。裸足で子供を抱えている。その足元に

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The Singel Bridge at the Plaeisstraat in Amsterdam (1896) George Hendrik Breitner

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雪のアムステルダムはシンゲル橋。犬もはしゃいでお散歩。

しまったな、ここの現在の写真を撮ればよかった。真ん中が車道で、服装が現代になっている以外は、今でもこんな感じ。

ファン・ゴッホ

Self-portrait 1887年 Vincent van Gogh

Van Gogh Self-Portrait with Grey Felt Hat 1886-87 Rijksmuseum.jpg
By フィンセント・ファン・ゴッホ - http://hdl.handle.net/10934/RM0001.COLLECT.9617, パブリック・ドメイン, Link

翌日にファンゴッホ美術館に行くので、詳細は後で書きます。彼の自画像はたくさんあるのですが、やはり1887年くらいからの絵の迫力がすごく好き。

その他気になったもの

"Arrangement in Yellow and Gray": Effie Deans (1876-1878) James Abbott McNeill Whistler.

Whistler James Arrangement in Yellow and Grey Effie Deans 1877.jpg
By ジェームズ・マクニール・ホイッスラー - uploaded by File Upload Bot, パブリック・ドメイン, Link

全体ばぼうっと紗がかかったような感じで、灰色と黄色が程よく入り混じった、ポートレートと抽象画の中間みたいな感じでよかったです。

ファンゴッホの自画像と向かい合わせに並んでいました。

Girl in a White Kimono 1894 George Hendrik Breitner 

George Hendrik Breitner - Meisje in witte kimono (Geesje Kwak).jpg
By George Hendrik Breitner - www.rijksmuseum.nl : Home : Pic, パブリック・ドメイン, Link

ファンゴッホもそうですが、日本の風俗にかなり影響を受けている様子が見えて面白いです。1894年だと明治27年で、日清戦争勃発の年。なので江戸の浮世絵からの影響というよりも後のはず。開国して着物が江戸時代よりも流通していたのかもしれません。

帯がよくわからないので、きっちり着せられたのか、ガウンみたいに羽織っているのかは、この絵からはよくわかりませんね。

 

1F 1800-1900 [1/2 オランダ王国成立期][通常展3/9] @アムステルダム国立美術館

ファンゴッホのあるウイングだが、前半はフランスとの戦い。

フランス革命軍によって、1795年にフランスの衛星国バタヴィア共和国となる。その後、初代ナポレオンの弟のルイ・ナポレオンを国王とするホラント王国が1806年に樹立される。苦難の歴史である。せっかくなので、編年的に調べてみた。

 

初代オランダ王 ルイ・ナポレオン 1809年 

1806年に即位した初代オランダ王 Lodewijk I (ローデウェイク1世。LodewijkはLouisのオランダ語読み) として記述されている、ルイ・ナポレオン。ナポレオンの傀儡とはならずそれなりに誠実に政治を行っていたらしく、ちょっと好意的な記述だった。

LouisBonaparte Holland.jpg
By Charles Howard Hodges - geheugenvannederland.nl : Home : Info : Pic, パブリック・ドメイン, Link

左手にバトンを持っていたがそれが修正された痕跡があるということだが、私はそれは見逃している。

彼の旗が残っている。

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英訳すると

"Louis Napoleon, King of Holland, presents to his capital Amsterdam these trophies seized by brave Netherlanders from their enemies"

実質的にフランス帝国によってオランダが滅ぼされている。となると生き馬の目を抜くこの世の中、間隙を縫ってイギリスが日本の出島にちょっかいをかけた。これが、1808年のフェートン号事件。ローデウェイク1世の治世中ですね。

ローデウェイク1世は、1810年にナポレオンに退位させられる。彼の次男がローデウェイク2世として国王の座につくが10日で剥奪。オランダはフランス帝国の直轄領となる。

1812年、フランスはロシアと戦争開始。9月にモスクワを陥とすものの、焦土作戦で大敗北。70万人で始めた戦いが、37万人戦死20万人捕虜という大敗。12月に戻ってきたときは5千人という、いわゆる冬将軍に負けた、というやつです。


チャイコフスキー 1812年(序曲) 小澤征爾

 

1813年には、第6次対仏大同盟による戦いで破れ、フランス軍潰走。フランスはオランダへのコントロールを失い、逆にオランダはネーデルランド公国を樹立。

1814年4月にナポレオン退位

1815年2月に、ナポレオンがエルバ島から抜け出す。
3月に、ルイ18世を追い落とし、再び帝位に(いわゆる百日天下)。
6月9日、1814年9月から行われていた『会議は踊る』で有名なウイーン会議もなんとか結論を出し、ウイーン議定書成立。ここでネーデルランド連合王国が設立。ネーデルランド連合王国は、現在の、オランダ王国、ベルギー(1930年独立 ベルギーがカトリック、オランダがプロテスタントという違いなど)とルクセンブルグ大公国(1815年はオランダと王を共にする同君連合。1890年に解消)からなる。(もともと同じ国だから「ベネルクス三国」と言われてもあまり違和感ないってことか)
6月18日、ワーテルローの戦い

 

ワーテルローの戦い / 1842年 (ヤン・ヴィレム・ピーネマン/ Jan Willem Pieneman)

1815年にあったワーテルローの戦いが、初代ナポレオン率いるフランス帝国軍と、英蘭連合軍+プロイセン軍の戦いなので、オランダにもこの話があって当然といえば当然。

フランス軍というかナポレオン軍はここで大敗退して、ナポレオンは6月22日に退位。セントヘレナ島に流される。ナポレオンの治世を永久に終わらせる大きな戦い。

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ワーテルローの戦い

これ、ルーブルの『ナポレオンの戴冠式』くらいある大作です。

そういえば、ルーブルワーテルローの戦いって見たかどうか全く記憶にないな。敗者側だからないのかもしれない。ドイツにはあるのかな?

 

過去記事でワーテルローの戦いに触れた博物館はこちら。イギリス側の見方です。 

nimben.hatenablog.com

nimben.hatenablog.com

なお、ワーテルローはフランス語読み。英語読みだとWaterloo。ロンドンの大きな駅ですね。とはいえ、この地名は世界各国にあるようです。*1

 

ウィレム1世 (1819年作)

ワーテルロー後、オランダ王国が成立してから最初の王、 ウィレム1世。

Portret van Willem I, koning der Nederlanden Rijksmuseum SK-C-1460.jpeg
By Joseph Paelinck - www.rijksmuseum.nl : Home : Info, Public Domain, Link

 

ウィレム2世 (1839年作)

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ベルギー独立前夜にはブリュッセルに住み、オランダとベルギーを分けたほうがいいとウィレム1世に進言していたほどの進歩的な王様(当時は王太子)だったようです。

そういう政治的なことはともかく、軍服ながらリラックスした表情と、犬のかわいらしさとがマッチして、とても好きな絵です。

 

*1:フランスがユーロスターの起点をwaterlooにするのは止めろと申し入れしていたという逸話は面白い。今は、St Pancrasセントパンクラス駅がロンドン側の起点

0F 1100-1600[通常展2/9] @アムステルダム国立美術館

独り歩きの悪いところで、見た順番がバラバラなので、一応年代別に並べ替えて書きます。アムステルダム国立美術館、構造が複雑で一本道ではないので、自分のいた場所が今ひとつ振り返っても、恥ずかしながら、よくわからないので。

 

階段などにフロア図があるので、それを参照してもいいのだが、

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一番いいのは地階もぎり近くのコンシェルジェでもらえる、フロアプランの小冊子。ちょっと手書きっぽい感じを出しているところと、ハイライトの写真が載っているところがステキです。

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フロアプラン

画面真ん中の花が活けてある丸いところがコンシェルジュ。そこに青赤で置いてあるのがフロアプラン冊子。

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0階 1100-1600

マグダラのマリア(1480) / Carlo Crivelli

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ちょっと前の少女漫画っぽい。

 

マリア様共演

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好みは一番左。この微笑みが好き。

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1F 1700-1800

おそらくこのウイングを丸ごと見逃している。ショック。

1.5の部屋にあるキャノンってフレンチ75 (M1897 75mm野砲)の原型っぽい形なんだけど。(別稿後述予定のIWMにあったので)

 

0F: アジアパビリオン [通常展1/9] @アムステルダム国立美術館

レンブラントシリーズ書き終えたので、そのほかのアムステルダムを。

ここからはアムステルダム国立美術館の通常展について9回で書きます。収蔵品が多くて長くなってしまった。

 

ヨーロッパ式なので、地上階=0階、1階、2階という表現になる。日本だとこれで1−3階ですね。紛らわしくなるので、この項では現地に合わせて、0-2階ということにします。

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アムステルダム国立美術館の館内図

"All the Rembrandts" をやっていたのは0階のExhibitionsのあたりのはず。その隣が、アジアパビリオン。0階表示だけど、ちょっと半地下な感じ。

半地下と言ってもうまく採光されて白く明るい部屋にある。アジアと言ってもインド以東の仏像系がメイン。コーナーとしてはそんなに大きくない。

 

光がたっぷり入る部屋で、白と直線を基調としたインテリアで仏像が展示されるのはとても清潔な感じで良いですね。

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触れる距離で360度回って見られるのは本当に楽しい。自然採光ですし。(当然ながら触らないし触ってはいけない)

 

海外の仏像などの説明が好き。私のような初心者にぴったりな基本的なことが書いてあるので。

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観音菩薩 / Guanyin


ポーズからは如意輪観音のように見えるがどの観音であるか定かではない。説明文をなるべく直訳すると、

観音

中国、山西省、12世紀

こちらが仏教の神である観音。観音は、危険に晒されている人々の救世主。岩のうえで瞑想している様子を表す像。伝説によると、彼は、幻想と無常のシンボルである水に映る月に瞑想をしている様子で見つかった。この顔の表情とポーズは、心の中の平安と集中を秘めている。

写真には撮っていませんが、アムステルダム国立美術館の主要な作品には、A4かA3くらいのラミネートされた紙に、見所を説明したものが複数枚、置いてあります。これもオランダ語と英語の両対応。こういうのいいなあ。日本の美術館ほど混んでいないからできるのかも?

 

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阿羅漢 / lohan

いい表情。13−14世紀中国。

 

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阿吽像

明らかに東大寺南大門の阿吽像の影響が感じられる。

 

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人が少ないので、真ん中に阿弥陀様を置いて、こんな写真を撮ってみたり。

 

最大の謎が、こちらの作品。

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Folding Screen with Shinto Shrine in Snow /839

ほの暗い白壁に静謐に佇む、屏風。白に金だと金閣寺に雪が積もった様子を思い出します。

作者が "Kawamata Koho (1891-1955)" とあるのですが、調べてもわからないのです。

川俣正は検索で引っかかりますが、明らかに生きている時代が違うので別人。

いい作品で類作みてみたいのだが、んー、なぜだ。

 

インド以東で紀元前から現代までという大雑把なくくりではありますが、まとまっていて良いかもです。残念ながら空いているので、じっくり閲覧できますし、おすすめです。

 

#流石に、東京国立博物館の東洋館と比べてはいけない。規模が違いすぎる。

#日本にあるオランダ専門の美術館ってあるんですかね。ざっとGoogleしてみましたが、見当たらず。

# 写真を見返してみると、どうやら0階はほとんど見逃している模様。部屋でいうと0.1-0.6という1100-1600のオランダ芸術と、0.7-0.13のSpecial Collections ですね。ちょっと残念すぎる。

# と言っても、トーハク全部見たことがあるか、とか言われるとないわけで。国立美術館規模のものを初見で全部見ろというのは、事前計画的にも当日的にもキャパが足りなくてしょうがないですわね。まあ、これを防ぐために有料ツアーに申し込むというのがあるのだが、それをすると好きなものの前に居座って堪能するという、私としては本来的な鑑賞ができなくなる。となるとトレードオフとしてしょうがなかった、ということにしよう!

 

 

レンブラント[5/5] オランダ黄金時代のポートレート展 @エルミタージュ美術館アムステルダム別館

Portrait Gallery of the Golden Age @Hermitage Amsterdam

https://www.hollandersvandegoudeneeuw.nl/en

 

レンブラントシリーズ、最後です。

 

サンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館の別館が、アムステルダムにある。

ここが開館10周年記念展をやっていたのだが、同時にオランダ黄金時代のポートレート展をやっていたので、こちらにも入ってみる。

中では3つ展示会をやっていたのだが、3つ合わせて25ユーロという統合券を現地で購入。

入るときは、アムステルダム国立美術館と同じく、バッグやコートをクロークに預ける。規模は3つ合わせても国立美術館の半分以下だと思われる。 

 

後でもちょっと書きますが、「オランダ黄金時代(17世紀)」って、オランダの中ではやはり強く思われている時代なのか、アムステルダム国立美術館でもかなり力を割いている感じです。

 

https://hermitage.nl/en/

中央の入り口でチケットを買って、クロークに入って、特別展とは逆側にまっすぐ。

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しばらくいくと、自動改札があるので、そこにチケットのバーコードをかざす。

 

すると、階段を登って、こんな感じ。基本はオランダ語と英語の併記です。

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『夜警』の実物大写真も含めて、集団ポートレート大集合の部屋があったりします。

こうやってみると、『夜警』の素晴らしさを再認識してしまいます。

おそらく『夜警』に影響を受けたと思われる作品群が部屋の壁全体に貼られているのは、なかなか迫力あります。

こういうのを描いてもらって、発注者は悦に入ったんでしょうね。

 

レンブラント、模写だけか、と思いきや。

 

ちょっとグロいかもしれませんが、解剖図も。

(グロ対策で、あと読み設定します)

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