cafe de nimben

見たものと、読んだもの

特別展「桃山―天下人の100 年」東京国立博物館(後期展示)図屏風を中心に

後期展示も観に行った。一番観たかったのは、唐獅子である。

しかし、図屏風。当たり前だが屏風の大きさなので、とても大きい。絵を浴びる感覚。(流石に『ミュシャ展』ほどではないにしろ) 

狩野永徳『唐獅子図屏風』右隻 (宮内庁三の丸尚蔵館)

Kano Eitoku 002.jpg
狩野永徳 [1] パブリック・ドメイン, リンクによる

でかい。図屏風なので、当たり前だが、そこに並ぶ『松林図屏風』『楓図屏風』と同じ高さなわけですが、そこに登場するのはこの唐獅子二頭。

つよい。勇壮。

唐獅子の尻尾も、狛犬のものと同じく概念尻尾のような気がする。神獣ですし。

獅子だけに足の太さと爪の鋭さは獰猛な肉食獣の感じ。とはいえ、他の龍虎図に観られる虎のような「大型ネコ」的な可愛らしさとはまた別のもの。

近くで見るとわかるのだが、琳派のような細かな書き込みはなく、遠くから眺めるようの力強い線と塗りで構成されていて、とても勇壮な感じである。

顔は怖いけど、殺気があるわけではなく、狩りをしてお腹いっぱいになって、おうちに帰っていくところなんでしょうかね?

#別作者(狩野常信)の左隻は展示されていない。江戸時代に書かれたものだから?


狩野探幽『四季花鳥図(雪中梅竹鳥図)』@名古屋城

Arbre de bambou et prune dans la neige par Kanō Tannyū.jpg
狩野探幽 http://www.salvastyle.com/menu_japanese/tanyu.html パブリック・ドメイン, リンクによる

なんと言っても、左の端に飛んでいる雀がいいんですよ!

金色も、強さの象徴というよりも、雪の白と合わさって、静謐な感じに変わっていくのが面白い。

 

前期展示だったので、後期では見れなかった狩野永徳『檜図屏風』と比べると

Kano Eitoku - Cypress Trees.jpg
Public Domain, Link

なんとなく似ていて面白い。永徳は探幽の祖父。本歌取り

戦国時代だった桃山とは異なり、江戸に入っているので、繊細さと叙情性があって面白い。

 

狩野永徳『花鳥図襖』聚光院

静か。金泥とは後で知ったが、淡い水墨画のような感じ。

大徳寺 聚光院では、時々特別拝観をやっているようなので、機会があれば観に行きたいです。

全部揃っているとこんな感じらしい。

国宝襖絵 大徳寺塔頭聚光院方丈 - 伝匠美事例|伝匠美

note.com

 

流石にこれを持ってこようとすると、『東山魁夷展』(国立新美術館。2018)の唐招提寺の御影堂障壁画展示という全68面展示レベルになるので、ほぼむり。

 

狩野山楽『紅梅図襖』京都大覚寺

Prune sur paravent par Kanō Sanraku.jpg
狩野山楽 http://www.salvastyle.com/menu_japanese/sanraku.htmlパブリック・ドメイン, リンクによる

 

狩野山雪『籠に草花図襖』京都天球院

global.canon

直線で構成される籬(マガキ)と、特に朝顔による曲線が混じり合って、美しい。金箔もなんだからキンキラキンというよりも、朝日に赤く照らされている感じの穏やかさ。

狩野山雪は、秀吉の命により狩野永徳の養子になった狩野山楽の養子。なので、狩野山雪は京狩野の2代目。 

狩野山雪、かっこいいです。今回は来ていませんでしたが、メトロポリタン美術館のこれ、とても素敵

老梅図襖-Old Plum MET DT229.jpg
狩野山雪 - ウィキメディア・コモンズはこのファイルをメトロポリタン美術館プロジェクトの一環として受贈しました。「画像ならびにデータ情報源に関するオープンアクセス方針」Image and Data Resources Open Access Policyをご参照ください。, CC0, リンクによる

狩野山雪『竹林虎図』京都天球院

数年に一度、京都天球院では特別拝観をやっているようなので、機会があれば観に行きたい。(普段は非公開っぽい。コロナもあるので、ちょっと数年は難しいかも)

 

『日月松鶴図屏風』三井記念美術館も、よかったです。これは作者不詳。

www.mitsuipr.com

狩野長信『花下遊楽図屏風』東京国立博物館

楽しげな宴会。タイトル通り、花(桜)の下で遊び楽しむ図屏風

Aronia Blossoms Screen 2.jpg
Kano Naganobu - Emuseum, パブリック・ドメイン, リンクによる

楽しそうでしょ? でも右は、展示ではモノクロの部分が金一色に。

Aronia Blossoms Screen 1.jpg
Kano Naganobu - Emuseum, パブリック・ドメイン, リンクによる

これは、大正12年関東大震災で失われているので、明治時代に撮った写真がこの図では貼られている。それについてのお話は、以下に詳しいのでご参照ください。

cpcp.nich.go.jp

狩野派ばかりでよくわからないので、系図的に

この『桃山展』で展示のあった人たちのみ。作品も添える。

 

狩野元信(父は、室町八代将軍義政の御用絵師だった正信)

  • 四季花鳥図屛風
  • 四季花鳥図(京都、大仙院)
  • 四季花鳥図屛風(兵庫、白鶴美術館)

狩野秀頼:元信の子(次男? 永徳の父ではない)

穏やかに宴を楽しむ様が、ほんわりとして良い。

Maple viewers.jpg
Kano Hideyori - Emuseum, パブリック・ドメイン, リンクによる

 

四代:狩野永徳(元信の三男松栄の子。織田信長豊臣秀吉などに重用される)

狩野宗秀:永徳の弟

  • 織田信長像(愛知・長興寺。教科書でよく見るアレ)

狩野長信:永徳と宗秀の弟

狩野光信(永徳の長男。44ないし48と早く亡くなる)

狩野孝信:永徳の次男

  • 光信の死後、事実上狩野派の総帥として差配。豊臣から徳川への移り変わりを、朝廷を含めた3方面作戦で凌いだというから政治家でもある感じ
  • 唐船・南蛮船図屛風(九州国立博物館)(いわゆる南蛮船。結構、犬がいてかわいい)

狩野探幽:孝信の息子。鍛冶橋狩野家の創設者。(宗家は、光信の孫の安信が継ぐ。中橋狩野派

狩野山楽:永徳の養子(娘婿とも)(京狩野派初代)

  • 狩野派徳川家康が江戸に行くと、大部分がついて行った(江戸狩野派)のにもかかわらず、山楽は秀吉の寵愛を受けていたのでそのまま京に残った。
  • 狩猟図(京都国立博物館
  • 紅梅図襖(京都・大覚寺
  • 牡丹図襖(京都・大覚寺
  • 松鷹図襖・壁貼付(京都・二条城)

狩野山雪:山楽の息子(すなわち京狩野二代目)

  • 韃靼人狩猟・打毬図屛風(国立歴史民俗博物館
  • 籬に草花図襖(京都・天球院)
  • 竹林虎図襖(京都・天球院)

狩野左京(佐久間左京):仙台藩お抱え絵師(初代)

  • 菊花図屛風(伝狩野左京。書は伊達政宗)(清楚な金箔の上に、白菊が咲いている。そこに伊達政宗の書が散らしてあって、雅な感じ)
  • wikipediaには織田信長の筆頭家老の佐久間信盛の子孫とあるが、直系なのかどうかもどこにも記載がなく、出自がいまいちわかりませんね)

 異彩を放つ、洋画:『泰西王侯騎馬図屏風』@神戸市立博物館

泰西王侯騎馬図屏風.jpg
作者不明   https://www.kobecitymuseum.jp/collection/detail?heritage=365024 パブリック・ドメインリンクによる

ある意味、一番面白かったのがこれ。作者不明。挿絵を観て、西洋画の技法で、図屏風に仕立てたもの。屏風の装丁もかっこいいんだな、これが。

描かれているのは左から、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世、オスマン帝国のスルタン(ムラト2世)、モスクワ大公(イワン雷帝)、タタール大汗と、割と同世代の王様。

 

 

参考

前期展示

nimben.hatenablog.com

 

 唐獅子と狛犬の尻尾考

nimben.hatenablog.com

 

 唐招提寺御影堂を移設して展示したに等しいレベルの東山魁夷展2018

nimben.hatenablog.com

 

絵を浴びるといえば、ミュシャ

nimben.hatenablog.com