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見たものと、読んだもの

2020年の振り返り

COVID-19の影響も否定はしないが、かなり迷走していた。

基本が在宅勤務になったことで、生活のリズムを変えるのがちょっと難しかった。仕事はどこででもできる派なのだが、いつ起きて、いつ寝るかを含めて、どういうリズムを主体的に作るかは重要で、会社に物理的に出社するというリズムがなくなったことで、どういうのが自分の集中力を高め、うまく休めるか、という事については、試行錯誤だった。

生活リズムの取り方

自宅に引きこもりがちになる。夏は痩せた。運動もできていた。しかし、秋口、疲労をうまく抜くことができず、膝にきた。それで運動をやめたら、リバウンドした。家で下半身をゴム系パンツで誤魔化していると、太っているのに気がつかないね。ヤバイ。

仕事が無限にできてしまうので、時間駆動とする。その日の量によって、開始時間と終了時間を決め、乗っていても延長しない。辛くてもその時間まではやる。

そして長めにお風呂に入って、気分を変える。長風呂は苦手だったので、風呂中にKindleを読む。

長風呂だけでは凝りは解消されなかったので、上積みが必要だった。

基本ポイントは中臀筋やハムストリングスの凝りの解消。ほぐすことと、ストレッチと有酸素運動無酸素運動、これを意識的に取り入れる時間を作らないといけないことを自覚した。理想は小学校の時間割かも。45分仕事して、10分休憩。休憩時は外に出て遊ぶ。

凝ったお尻周りをほぐす

外に出て遊ぶというのもあれなので、お尻をほぐすために、野球の硬球を買った。ゴルフボールだと凝りの芯に届かせるには直径が不足し、軟球だと柔らかいのでこれも届かず、フォームローラーではピンポイントに効かないということで、最後の手段である。今のところ割と奏功している。体重をのせていくが、毎回痛い。早く痛気持ちいに持っていきたい。

低頻度の激しい運動より、高頻度の全身運動にシフト

坂道ダッシュ、not 階段上り

運動は、階段上りをやっていたが、これは割と股関節に負担がかかる。

ということで、坂道ダッシュをするようになった。

ダッシュによって筋肉に負荷をかけるのと、ダッシュ後に外の空気を吸って心肺機能を鍛えるのとの両取りを狙う。お日様にも当たりたいし。

たまに猫がいて癒される。にゃー。

Tarzan自重Big6のカスタマイズ

天気が悪い時と朝一番は、外に出るのが億劫なので、Tarzanで知った自重big6をアレンジして行う。

Tarzanの自重Big6は、スクワット(脚)、ロールアウト(背中)、腕立て伏せ(胸)、ハンドスタンド(肩)、ブリッジ(腰)、クランチ(腹)を狙うもの。

これらを低負荷で連続で行うことで、朝のウォームアップと休憩の運動としている。

自分用にカスタマイズしている。

まず、ロールアウトは除いた。理由は、これは事実上、腹筋ローラー運動。クランチと合わせると過負荷になるため。

動作を変えているのは、ブリッジ。スタティックではなくダイナミックが良かったので、ウォールヒップスラストを採用している。自重のくせにお尻とハムストリングスにガツンと来て良い。

 

負荷を軽くしているのは、腕立て伏せとハンドスタンド。これらは、膝をついて行っている。

低負荷なので、休憩を挟まず、5種目12回を一セットとして3セット休憩を挟まずに行う。最後の頃は汗もかいていい感じ。

膝痛が軽くなれば、これをウォーミングアップとして、筋トレを入れていきたいが、無理はしない。あと、できれば痩せたいw

勉強

勉強の本を読むのは減った。風呂はリラックスして気分を変えるために入っているので、風呂では勉強系の本を読むつもりはない。

また、勉強は読んでわかった気になるのは意味がないので、手を動かしたい。となると、ということで始めたのは、Udemy。いくつか講座を買って試している。冗長な説明の時に再生速度を上げることができるのはいい。また、止めておいて、調べ物をして補強しながらというのもいい。本当は忘却曲線に沿って復習しないと思いながら、そこまでできていないのは、反省点だ。

でもねぇ、勉強って、勉強が目的になるとモチベーションが保てなくなるから、きちんとアウトプットが必要。ゴールを設けて、それのマイルストーンを設けないと、勉強をしているだけだと、ただ時間を消費しているだけになる。というか、やらないとまずいと自分でネガティブなプレッシャーをかけるだけになるから、辛くなるんですよ。楽しまないとね。

あと、英語の発音系は毎日やるといいです。やらないとすぐ、口の周りの筋肉が衰えるので。日本語の発音もよくなるしね。(口を開かずに話していると、ググもって聞こえて、聞き取りづらくなる)

コミュニティ

会社の縁、友達の縁、家族の縁の3つがあると思うのだけど、リアルで会うというのが難しくなったので、どうしようか考え中。それこそZoom飲みその他で維持はある程度できるにしても、広がりがないのは、なかなかつまらない。今年は自分で手一杯だったので、もうちょっと外に出ていきたい。3つのどの縁にしても、自発的に動かさないと動かないね。

というところで、2021年も、少なくとも前半戦は今とあんまり変わらない生活になると思うので、うまく適応していきたいところ。

まずは、ご健康で!

 

 

2020年面白かった美術展

と言っても、全然見に行けていないので、ランキングは無しです。恨むべし COVID-19。

 

在宅勤務で鬱々としていたというか、気分転換がしづらい状況にいたので、いかに美術展に行くのが自分にとっての癒しになっていたか気づいた一年でした。特に後半。

今年は、

銀座エルメスでやっていたこれ

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しかし、ソニービルがないおかげで、エルメスのビルの全景が遠目にも見えて美しくて良いですね、数寄屋橋交差点。 

 

お伊勢様お参りのついでに行った京都国立博物館。大きな特別展はやっていなかったのだけど、やっぱりいいですよ、建物もモダンで見やすいですし。

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もうちょっと源氏物語を勉強しておくべきだったかな。この後も、土佐光起近辺の絵巻物をいくつか見ましたし。

 

それからトーハクの(来訪直後くらいに中止になってしまってもったいなかった)『出雲と奈良』展。あの柱の展示は凄かった。

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貸し出し元になっている島根県立古代出雲歴史博物館は今年の4月から再開。機会があればぜひ足を運んでみてください。

 

ここからずっと見れなくて、やっと足を運んだのが、『桃山展』前期後期と2回行きました。

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カッコ良かったお茶碗の話を書こうとしてまだ書いていません……。

赤楽の『僧正』とか良かったのよん。

それから、前期にいって、後期に行く予定にしている、『琳派印象派

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後期は俵屋宗達風神雷神』が楽しみ。アーティゾン美術館は、自分のスマホで、作品解説を聞けること、作品の位置をbluetoothスマホに確認させることなんかが、新しくて良かったです。ガラスもMOA美術館ばりに、透明度が高く反射もあまり気になりませんでしたし。書いてないけど、通常展も良かったです。カンディンスキー以降の現代美術もいい感じですし。収集の癖が横浜美術館と似ているような気もするけれど。(横浜は横浜にゆかりがある人のも集めるぜと言っているが、アーティゾン美術館のポリシーはどうだったけな。読んでみなくちゃ)

本当は、『燕子花図屏風』をみに根津美術館に行きたかったけど、見損ねた。

感想にもちょっと書きましたが、金箔の静けさを感じた狩野派琳派展でした。

 

美術館でいうと

原美術館が終わってしまう(正式には移転してしまう)

アーティゾン美術館は初めて行けた。

東京都現代美術館は再オープンしたのだけど、行けてない(実はまだ一度も行っていない)

金沢21世紀美術館に、今年も行けなかった(計画までしたんだけどなあ)

というのが、今年の個人トピック。

COVID-19のせいで、特別展でも大混雑にならなくなったのは個人的には嬉しい。けど、経営的には苦しいんじゃないかなと心配。サブスクじゃないけど、年間会員などで定期収入があるとか、物販頑張るとか、トーハクがドラマの撮影に協力したように別で儲ける口を探すとか、なんかそういうのも含めて大事になるかも。

amazon prime大英博物館のドキュメンタリーがあって、どうやって寄付を募るかという話で激論を交わしていたのを思い出す。露出するのはいい、金が入るのはいい、でもそれで格を落としては何もならない、と館長が言っていたのが印象的だった。

予約はまだどうかなあとみている。旅行の時(アムステルダム 美術館とか)であれば予約してというのはいいんだけど、COVIDのようにある意味確約できないという場合、その予約行為に意味があるのかという疑問と、また、「あ、ちょっと時間があるから、ふらりと寄ってみよう」としたときに、予約というワンステップが入る煩わしさは、悪い面も感じる。

東京も新規感染者600-800名とかになっている。私はあまり自分の健康に自信を置いていないから、こういう時人混みには出たくない人なのです。

 

 

今年読んで面白かったマンガ2020

まあ、今年を一言で言うと「鬼」かな。 

 

吾峠呼世晴鬼滅の刃』(全23巻完結)

チラチラと名前は聞いていたが、テレビアニメをみて内容を初めて知った。最終23巻が出た段階で、Kindleで一括購入。

しかし、このガロ風味、マーケティング的には、なぜ売れたのかはよくわからない。そもそも炭治郎って根本的なところがよくわからない。彼は人なの? ダークサイドがない聖人っぽい。行動は、ポジティブで礼儀正しくて、苦難に真正面からぶつかって、人からも好かれると言う、古来のヒーローものという気がする。

でも、普通の映画ならカットされるくらいにすごく努力するのは面白かった。地に足についた凡人主人公に飽きがきて、神話的な主人公が再び喝采を浴びるのか? と言って、似た漫画もなさそうなので、それでブームになりそうって感じもない。不思議。

 


『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』公開中PV

日本映画市場に残る売り上げとなった、無限列車編。次の遊郭編は映画の尺でいけるかもしれないが、その後のはどうするんだろう。半年おきに映画化するんだろうか。『ロード・オブ・ザ・リングス』みたいに3部作くらいで。スタジオのufotableの中の人、過労死しませんように。

 

裏側を知るのに良いインタビュー。

news.livedoor.com

 

田島列島『水は海に向かって流れる』(全3巻)

心の中に巣食う鬼とどう対決するか。を、炭治郎ではない凡人がやるとどうなるか?

自分や他人の行動がちょっと変で、かつそれが無意識だった時、それが何かで蓋をしていた自分の潜在意識だと気がついたら?

この作品を知ったというのは、今年の大きなラッキーポイント。

すごく普通の人の半径30センチをきめ細やかにすくいとる作家さんだなと。「こんなけつの穴の小さいことで悩むなんて」という呪いがあるが、端から見てどんな小さくてくだらない悩みやトラウマであっても、自分にとって大事ならば一生悩んでいても、正面からぶつかってもいいんだなと思わせてくれる。(そしてうまくすると、悩むというより、人とぶつかって足掻くことで解消されるかもという夢を抱ける)ささやかな苦しみと苦味と、そのさきの救い。

『水は海に向かって流れる』を実写化するとしたら主人公、20代の頃の小林聡美にやってほしいんだけど、今だったら誰だろうなぁ。松岡茉優かなあ。伊藤沙莉もいいなあ。

前作の子供はわかってあげない(全2巻)は2021年夏に実写映画になるそうで。キャストはすでに発表されていて、こちらは主人公が上白石萌歌。何気ない表情が大事な漫画なので、大袈裟な演技になっていなければいいなというのだけ心配。


沖田修一監督×上白石萌歌主演『子供はわかってあげない』予告編

manba.co.jp

アベツカサ/山田鐘人『葬送のフリーレン』

こちらは、鬼のような魔族と戦ってきて、これから戦うことになるエルフの話。

その発想はなかった、というところから今年の掘り出し物としては、『葬送のフリーレン』もあげたい。今年単行本発売なのに、もう3巻出ている。早い。

RPGによくある勇者パーティが魔王を倒して凱旋するところから始まるというのが、やられた。また、長寿命のエルフを主人公に、人類との寿命の差による感じ方の違いを主体にしているところも。1巻のノスタルジックさが素晴らしい。

と言いつつ、2巻以降は、ノスタルジーに止まるのではなく、現在そして未来に目を向けているのが、また良い。今の旅のゴール地点が魔王城なので、30年前の旅、再びなんではあるが、ただの再びになっていない。同じようなところを歩きながらも、それは同じ轍を踏み直すのではなく、螺旋のように少しずつ別の場所に向かっていくのだ。

鬼との寿命の差、というところに『鬼滅の刃』のテーマがあったが、エルフと人類という意味で、これは鬼滅と似ているのかも。


『葬送のフリーレン』PV初公開 魔王を倒した勇者一行のその後を描く“後日譚”ファンタジー

とよ田みのる金剛寺さんは面倒臭い』

こっちは主人公が鬼である。

面倒臭いと最初から言っているから、突き抜けてそのめんどくささを描くぞ! と開き直って大正解な痛快作。一周回ってストレートなラブコメ


『金剛寺さんは面倒臭い』3巻発売記念PV

そのめんどくささって、すごく大事だと思っている。それぞれの人が持つ根っこのところって、誠実に説明しようとしたら必ずめんどくさいものだから。必ずしも筋が通っているわけでもないし、飛躍やねじれも歪みもあるし。だから、普通は面倒になって説明しない。遮られたら怖いから。でも、どうしても言わないといけない時って必ずあって、その時はどんなに面倒臭いと思っても、逃げたらいかんと思っている。


chelmico「Easy Breezy」【Official Music Video】

「どうせやるなら めんどくさくなろうぜ」とchelmicoが "Easy Breezy" で歌っている。

 

大童澄瞳『映像研には手を出すな!』

chelmicoの"Easy Breezy" が主題歌になっていたNHKアニメ版から、乃木坂で実写ドラマと映画化と、映像研三人娘が今年の前半戦大旋風でした。


TVアニメ「映像研には手を出すな!」PV 第3弾【1/5(日)24:10~NHK総合テレビにて放送開始】

アニメが主題だから、漫画で描いたものが動くのはなかなかに快感でした。

きちんとめんどくさいしね!

ただ、原作漫画5巻が1月に出てから、続刊が出ていないので悲しい。いつものペースだと年末には出ているんだけど。

三人娘ではなくなって、音声や批評家やクライアントが出てきて、さらにめんどくさくなっていくとどうしても前進の駆動力が落ちるのだが、はてさてそこをどうしてくるのでしょうか。6巻が楽しみ。

宇佐崎しろ マツキタツヤ 『アクタージュ act-age』

漫画関係で今年一番悲しかったのが、この連載打ち切り。

別記事でも触れたが、黒山墨字編でどうなってくるかという期待を胸にしていたのに。すでにKindle版は新規販売していないようだし、紙版も無期限出荷停止なので、流通在庫限り。打ち切り経緯は経緯としてあるものの、いい作品が忘れ去られるのは、どんな理由であれ、辛い。布教のしようもない。

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芥見下々『呪術廻戦』(連載中)

『呪術廻戦』も少年ジャンプ。

鬼滅、アクタージュと並んで見ると、私にとって今年は少年ジャンプの年だったなあという感じがする。


TVアニメ『呪術廻戦』ノンクレジットOPムービー/OPテーマ:Eve「廻廻奇譚」

 

少年ジャンプは、いわゆる黄金期が直撃世代だったので、それ以降は連載で読んでいないから、今の連載陣はほぼ知らない。唯一知っていた『こち亀』も終わったし。自分が読んでいなくても、本流としてずっとジャンプって看板掲げている強さを感じる。

プログラムピクチャ的な良さという言い方には収まらないかなと思っています。なんかまだ作者が意識的には表に出していない闇をたまに感じるので。

呪いを、本当にあるかどうかは関係なく、人がネガティブに思ってしまったものの集積と定義したことは、人の闇をガッツリ描くよ、と宣言しているのと同じだと思っている。これからどこまで陰惨なところを掘っていくのかという内容面と、それを少年誌のレベルの文体として受け入れられるレベルとして見せるのかというテクニカルなところも気になっています。真正面から描いたら、青年誌にせざるを得ないと思うので。

そういう意味で『鬼滅の刃』は一部欠損表現などほぼアウトなのでは? というところもありつつ折り合いをつけていてすごいと思った。折り合いをつけさせるところが、ジャンプ編集部の強さかなと。

 

その他 

唯一定期的に買っているのは月刊アフタヌーン

ずっと追っている連載は、『ヴィンランドサガ』話が畳まれようとしているのか、ここからさらに捻られるのか、ちょっとした踊り場に入っているのだが、それでも見せる巨匠感すら漂ってきた。激しくてどうにかなりそうだった最初の方の話、読み返そうかしらね。ある意味、アシェラッドが懐かしくもある。

『フラジャイル』は紙の単行本も買う別格。地味に面白いキャラが出てくる『フラジャイル』だが、あの弁護士先生はまた面白い視点で病院を突く話を持ってくるねぇと。病理医は、全分野の医師と関係があるから、医療に関わることならなんでも持ってこれるのが強いかも。コロナ、扱う日が来るのかな。

今年の新連載では、つるまいかだ『メダリスト』がいい。フィギュアスケートの過酷さは知っている気がしていたがとんでもない。あんな若さ(と言うか幼さ)で選別が始まるなんて。が、それを明るく楽しく頑張る主人公二人が、かわい楽しい。

ゆうち巳くみ『友達として大好き』も、ちょっと捻った角度のファムファタール(?)の主人公が、人とのコミュニケーションのルールを学びながら頑張る話。こう言うのって最後は支えていた側が実は支えられていたにいきそうなものだけど、このまま突っ張っ子って明るくゴールと言うのでもいいかもしれない。

なんかどっちも、ポジティブ天然頑張るの話だな。そう言うのに飢えているのか、私。

 

その他

twitterから火がついた上山道郎『悪役令嬢転生おじさん』。なろう小説で流行している「悪役令嬢」ものも、一捻りするとこんな視点の面白さが。

眉月じゅん『九龍ジェネリックロマンス』は、最初は古き良き九龍ものかと思ったら、これはなんだろうね。どう着地するのかが分からずに読めるのは連載物の面白さ。内容は、九龍でジェネリックな感じの人々がロマンスに落ちる話。何を喋ってもネタバレになりそうだから、面白いとだけ。

最後に

最後に傾向として、「私が私らしくある」ことを目指し、「人が人らしくあること」を許容することを正義とするような作品が増えてきたと思う。また、男女がいればすなわち恋愛ではなく、男女でも友達として仲良くなるし、LGBT+のいることは別に普通にあることだ、と言うジェンダーバイアスの少なさが当たり前な書き方になってきたかなあと言う気がする。これが「今」である気がする。逆に、ちょっと前のジェンダーバイアスがゴリゴリあるようなものに対して古いと感じるようになった。

別にジェンダーバイアスに限らないのだが、その共同体の精神に自分を溶かしていくと言う話が、今後どう書かれていくのかは、方向性として注目している。権威やシガラミに抑圧されているところに、個が個であることで突破するのは美しい。しかし、突破した後もそれで居続けることはなかなか辛い。集団の権威に自分を溶かし込んでいく喜びというのは、個の自由はないかもしれないが、序列をのぼるというわかりやすい階段があるし、それを突破していく楽しさはある。ベクトルは正反対で、この二つの中をどうゆれていくか、バランスをとるのか。自分がやりたいことと、属する集団がやりたいことがズレた時、どう折り合いをつけるのか。だんだん昭和のヤクザ映画的な話になってきたけれど、どういうバランスのお話が、2021年に出てくるのか、楽しみにしています。

 

 

『琳派と印象派 東西都市文化が生んだ美術』(前期)@アーティゾン美術館

アーティゾン美術館初参戦。

前身のブリジストン美術館も、多分行ったことがないので、本当の初参戦。

 

西都市文化ということで並べるのが正解だったかは、正直よくわからなかった。ファンゴッホ+浮世絵くらい近いとわかるんだけど。

しかし、琳派の名品はやっぱりいいなあとしみじみした。

 

前期は12月20日まで。後期は22日から。そして後期は年末の大目玉がある。こいつだ。

Fujinraijin-tawaraya.jpg
俵屋宗達 (Tawaraya Sotatsu, ? - ?) - Brother Sun , Sister Moon, パブリック・ドメイン, リンクによる

尾形光琳版も好きなんだけど、個人的にはこいつが一番好き。

一度だけ行くのなら、後期がいいんだろうけど、どうしても前期に行きたいものがあったのだ。それがこの、『第一章 the 琳派 3 墨の世界』

前期でしか展示しない『第一章 the 琳派 3 墨の世界』

琳派だとどうしても金箔が貼っている背景に、たらし込みなどの技法を用いて描かれるものという印象があるが、これは墨だけ。

琳派の太い流れである、俵屋宗達尾形光琳>鈴木其一>酒井抱一の4巨匠勢揃いという豪華版。

 

まずは幽玄系。

俵屋宗達『蓮池水禽図』(国宝。1615年頃。京都国立博物館蔵)

RENTISUIKIN SOTATSU.JPG
俵屋宗達 - Emuseum, パブリック・ドメイン, リンクによる

墨だけで、たらし込みの技法など使って、生き生きと幽玄にというなんとも矛盾した物を両立させている。

俵屋宗達って、前述した『風神雷神』や今回も展示されている『舞楽図屛風』のような、金箔の上にかっこいいオブジェをカッコよく配置する、というちょっと剽げた面白さという印象を今まで持っていた。いやー、この『蓮池水禽図』のすーっとした線と、墨の濃淡で描かれる遠近感といい、かっこいい。墨の濃淡の遠近感というと、長谷川等伯『松林図屏風』(1593年ごろ)を思い出すが、作成年から考えると、等伯の技法を宗達が盗んだのかしら?

 

酒井抱一『白蓮図』(細見美術館蔵)

白蓮がすーぅっと泥の中から首を出して清い花を咲かせる、心洗われる作品。

 

 

参考:比較が色々あって面白い

酒井抱一筆《白蓮図》 (細見美術館所蔵) に関する一試論

 

鈴木其一『夜桜図』(個人蔵)

葉のシルエットに墨の濃淡をつけて置いてあり、ため息がこぼれるような美しさだった。同じ形のものを濃淡をつけ、リズミカルに構成して配置する琳派らしさがあるのだが、それが楽しさより、幽玄に寄っている。

 

かわいい系

俵屋宗達『狗子図』

https://i1.wp.com/artmatome.com/wp-content/uploads/2015/12/matome4-2.jpg

たらし込みで、誑し込まれる。

 

尾形光琳『竹虎図』

ご存知、京都国立博物館の「トラりん」の元ネタ。 

Tiger and Bamboo.jpg
Ogata Kōrin (1658-1716) - Kyoto National Museum, パブリック・ドメイン, リンクによる

 

第一章 the 琳派:花木草花

これは、前期後期で半分ずつ。

尾形光琳『槇楓図屛風』(重要文化財。18世紀。東京藝術大学美術館蔵)

全体的に暗めの照明のなかで、金箔の上の赤い花が浮き立つような感じ。

詳細を見るとなるともっと明るい方がいいが、逆にもっと暗いのも陰影礼讃的によかったかもしれない。『桃山展』でもたくさん金箔物(狩野派)を見たが、暗い中の金箔って、静かで良い。間違っても秀吉の黄金風呂の金とは違う。

 

参考論文。

重要文化財尾形光琳筆「槇楓図屏風」東京藝術大学大学美術館所蔵の現状模写及び装潢

https://www.housen.or.jp/common/pdf/26_13_hayashi.pdf

(伝)俵屋宗達の同名作品(山種美術館蔵)の模写なのか。知らなかった。

 

序章は、前期後期総取っ替え。前期は「京」

トーハクの『桃山展』でもやっていたのとは別の『洛中洛外図屏風』(作者不明、江戸時代)が展示されていたので、流れを感じる。狩野派琳派は金箔的に似ているので、どちらも同時に見ると面白い。

本阿弥光悦筆&(伝)俵屋宗達画『桜柳下絵新古今集和歌巻』(17世紀。個人蔵)

鉄板なのは、本阿弥光悦筆&(伝)俵屋宗達画の組み合わせ。ここでも『桜柳下絵新古今集和歌巻』がその綺麗さを発揮。

出てないけれど、これの親戚と言えば良いだろうか。

Anthology with Cranes IV.png
Tawaraya Sōtatsu and Hon'ami Kōetsu - Kyoto National Museum, パブリック・ドメイン, リンクによる

個人蔵なので、次いつ出るかわからないから、ここで見るの、おすすめです。 

 

第二章 琳派x印象派 1. 継承

鈴木其一『藤、蓮、楓図』(通期。19世紀。アーティゾン美術館蔵)

傷みもなく、色が冴え渡って、藤の紫、蓮の緑、楓の朱赤が響きあって美しい。

www.artizon.museum

 

ちなみにこちらは酒井抱一

www.moaart.or.jp

 

池田孤邨 『青楓朱楓図屛風』(通期。19世紀、アーティゾン美術館蔵)

酒井抱一の弟子で、鈴木其一の兄弟弟子である池田孤邨 『青楓朱楓図屛風』も素晴らしい。左側が朱の楓、右側が青々とした楓と、季節が分かれているのが美しい。赤と緑なので補色なので、ド派手な感じ。

 

第二章 琳派x印象派 2. 水の表現

尾形光琳『富士三壺図屛風』(前期のみ。18世紀、個人蔵)

ど迫力の六曲一双。なんだろう、東山魁夷っぽい。左隻の荒々しい海と、右隻の堂々たる富士山の対比が面白い。

クロード・モネ『睡蓮の池』(通期。20世紀、アーティゾン美術館蔵)

琳派 x 印象派なので、同じ部屋に琳派印象派が展示されているのだが、ここの対抗でよかったのがモネ。

Claude Monet - Water-Lilies (Bridgestone Museum).jpg
クロード・モネ - 不明, パブリック・ドメイン, リンクによる

朝日のような光を水面から反射して、とても穏やか。光琳とはずいぶん違って面白い。

 

第二章 琳派x印象派 3. 間(ま)

間というか、コンポジションの妙は、前期しか展示がない宗達のこれ

俵屋宗達舞楽図屛風』(前期のみ。重要文化財。17世紀、醍醐寺蔵)

Sôtatsu Bugaku links.jpgSôtatsu Bugaku rechts.jpg
Tawara Sôtatsu - Catalogue, パブリック・ドメイン, リンクによる

浮世絵のように遠近法がない感じで、かっこいい衣装を着た舞楽する人たちをコンポジションの妙で見せる。なんとなく、金箔の上に、フォトショップでここら辺かな? と置いて作ったかのような。ポップでリズミカル。

ちなみに、 左隻右隻の真ん中手前5mくらいのところに、ドガの踊り子の彫刻があり、舞楽を一緒にしているみたいで良い配置でした。時と場所を超えた競演。

 

今、根津美術館でやっているのだが琳派の代表作である

尾形光琳『燕子花図屏風』(国宝。18世紀、根津美術館蔵)

KORIN-Irises-R.jpg
Ogata Korin, died 1716 - Nezu Gallery, パブリック・ドメイン, リンクによる

と、ノリが似ている。

 

第二章 琳派x印象派 5. 注文主

尾形光琳『孔雀立葵図屏風』(通期。重要文化財、18世紀、アーティゾン美術館)

左隻の赤白の花と緑の葉(=イタリア国旗模様)の立葵の茂った様子と、右隻の孔雀の夫婦の対比が、派手ではなく穏やかに見える。

www.artizon.museum

 

第三章 the 印象派 

琳派に圧倒されて、印象派はあんまり印象に残っていないのだけど、とは言え、これは大好き。

クロード・モネ『黄昏、ヴェネツィア』(1908年ごろ。アーティゾン美術館蔵)

Claude Monet - Twilight, Venice.jpg
クロード・モネ - 不明, パブリック・ドメイン, リンクによる

シニャックもよかった。絵具がゴツゴツしているのに淡い印象でいいのよね。大好き。

参考資料

美術館公式

www.artizon.museum

 

 公式サイト

www.artizon.museum

 

 

 ほぼ同時期開催の、琳派とタメをはる金箔集団、狩野派の図屏風たくさんの展示

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特別展「桃山―天下人の100 年」東京国立博物館(後期展示)図屏風を中心に

後期展示も観に行った。一番観たかったのは、唐獅子である。

しかし、図屏風。当たり前だが屏風の大きさなので、とても大きい。絵を浴びる感覚。(流石に『ミュシャ展』ほどではないにしろ) 

狩野永徳『唐獅子図屏風』右隻 (宮内庁三の丸尚蔵館)

Kano Eitoku 002.jpg
狩野永徳 [1] パブリック・ドメイン, リンクによる

でかい。図屏風なので、当たり前だが、そこに並ぶ『松林図屏風』『楓図屏風』と同じ高さなわけですが、そこに登場するのはこの唐獅子二頭。

つよい。勇壮。

唐獅子の尻尾も、狛犬のものと同じく概念尻尾のような気がする。神獣ですし。

獅子だけに足の太さと爪の鋭さは獰猛な肉食獣の感じ。とはいえ、他の龍虎図に観られる虎のような「大型ネコ」的な可愛らしさとはまた別のもの。

近くで見るとわかるのだが、琳派のような細かな書き込みはなく、遠くから眺めるようの力強い線と塗りで構成されていて、とても勇壮な感じである。

顔は怖いけど、殺気があるわけではなく、狩りをしてお腹いっぱいになって、おうちに帰っていくところなんでしょうかね?

#別作者(狩野常信)の左隻は展示されていない。江戸時代に書かれたものだから?


狩野探幽『四季花鳥図(雪中梅竹鳥図)』@名古屋城

Arbre de bambou et prune dans la neige par Kanō Tannyū.jpg
狩野探幽 http://www.salvastyle.com/menu_japanese/tanyu.html パブリック・ドメイン, リンクによる

なんと言っても、左の端に飛んでいる雀がいいんですよ!

金色も、強さの象徴というよりも、雪の白と合わさって、静謐な感じに変わっていくのが面白い。

 

前期展示だったので、後期では見れなかった狩野永徳『檜図屏風』と比べると

Kano Eitoku - Cypress Trees.jpg
Public Domain, Link

なんとなく似ていて面白い。永徳は探幽の祖父。本歌取り

戦国時代だった桃山とは異なり、江戸に入っているので、繊細さと叙情性があって面白い。

 

狩野永徳『花鳥図襖』聚光院

静か。金泥とは後で知ったが、淡い水墨画のような感じ。

大徳寺 聚光院では、時々特別拝観をやっているようなので、機会があれば観に行きたいです。

全部揃っているとこんな感じらしい。

国宝襖絵 大徳寺塔頭聚光院方丈 - 伝匠美事例|伝匠美

note.com

 

流石にこれを持ってこようとすると、『東山魁夷展』(国立新美術館。2018)の唐招提寺の御影堂障壁画展示という全68面展示レベルになるので、ほぼむり。

 

狩野山楽『紅梅図襖』京都大覚寺

Prune sur paravent par Kanō Sanraku.jpg
狩野山楽 http://www.salvastyle.com/menu_japanese/sanraku.htmlパブリック・ドメイン, リンクによる

 

狩野山雪『籠に草花図襖』京都天球院

global.canon

直線で構成される籬(マガキ)と、特に朝顔による曲線が混じり合って、美しい。金箔もなんだからキンキラキンというよりも、朝日に赤く照らされている感じの穏やかさ。

狩野山雪は、秀吉の命により狩野永徳の養子になった狩野山楽の養子。なので、狩野山雪は京狩野の2代目。 

狩野山雪、かっこいいです。今回は来ていませんでしたが、メトロポリタン美術館のこれ、とても素敵

老梅図襖-Old Plum MET DT229.jpg
狩野山雪 - ウィキメディア・コモンズはこのファイルをメトロポリタン美術館プロジェクトの一環として受贈しました。「画像ならびにデータ情報源に関するオープンアクセス方針」Image and Data Resources Open Access Policyをご参照ください。, CC0, リンクによる

狩野山雪『竹林虎図』京都天球院

数年に一度、京都天球院では特別拝観をやっているようなので、機会があれば観に行きたい。(普段は非公開っぽい。コロナもあるので、ちょっと数年は難しいかも)

 

『日月松鶴図屏風』三井記念美術館も、よかったです。これは作者不詳。

www.mitsuipr.com

狩野長信『花下遊楽図屏風』東京国立博物館

楽しげな宴会。タイトル通り、花(桜)の下で遊び楽しむ図屏風

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Kano Naganobu - Emuseum, パブリック・ドメイン, リンクによる

楽しそうでしょ? でも右は、展示ではモノクロの部分が金一色に。

Aronia Blossoms Screen 1.jpg
Kano Naganobu - Emuseum, パブリック・ドメイン, リンクによる

これは、大正12年関東大震災で失われているので、明治時代に撮った写真がこの図では貼られている。それについてのお話は、以下に詳しいのでご参照ください。

cpcp.nich.go.jp

狩野派ばかりでよくわからないので、系図的に

この『桃山展』で展示のあった人たちのみ。作品も添える。

 

狩野元信(父は、室町八代将軍義政の御用絵師だった正信)

  • 四季花鳥図屛風
  • 四季花鳥図(京都、大仙院)
  • 四季花鳥図屛風(兵庫、白鶴美術館)

狩野秀頼:元信の子(次男? 永徳の父ではない)

穏やかに宴を楽しむ様が、ほんわりとして良い。

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Kano Hideyori - Emuseum, パブリック・ドメイン, リンクによる

 

四代:狩野永徳(元信の三男松栄の子。織田信長豊臣秀吉などに重用される)

狩野宗秀:永徳の弟

  • 織田信長像(愛知・長興寺。教科書でよく見るアレ)

狩野長信:永徳と宗秀の弟

狩野光信(永徳の長男。44ないし48と早く亡くなる)

狩野孝信:永徳の次男

  • 光信の死後、事実上狩野派の総帥として差配。豊臣から徳川への移り変わりを、朝廷を含めた3方面作戦で凌いだというから政治家でもある感じ
  • 唐船・南蛮船図屛風(九州国立博物館)(いわゆる南蛮船。結構、犬がいてかわいい)

狩野探幽:孝信の息子。鍛冶橋狩野家の創設者。(宗家は、光信の孫の安信が継ぐ。中橋狩野派

狩野山楽:永徳の養子(娘婿とも)(京狩野派初代)

  • 狩野派徳川家康が江戸に行くと、大部分がついて行った(江戸狩野派)のにもかかわらず、山楽は秀吉の寵愛を受けていたのでそのまま京に残った。
  • 狩猟図(京都国立博物館
  • 紅梅図襖(京都・大覚寺
  • 牡丹図襖(京都・大覚寺
  • 松鷹図襖・壁貼付(京都・二条城)

狩野山雪:山楽の息子(すなわち京狩野二代目)

  • 韃靼人狩猟・打毬図屛風(国立歴史民俗博物館
  • 籬に草花図襖(京都・天球院)
  • 竹林虎図襖(京都・天球院)

狩野左京(佐久間左京):仙台藩お抱え絵師(初代)

  • 菊花図屛風(伝狩野左京。書は伊達政宗)(清楚な金箔の上に、白菊が咲いている。そこに伊達政宗の書が散らしてあって、雅な感じ)
  • wikipediaには織田信長の筆頭家老の佐久間信盛の子孫とあるが、直系なのかどうかもどこにも記載がなく、出自がいまいちわかりませんね)

 異彩を放つ、洋画:『泰西王侯騎馬図屏風』@神戸市立博物館

泰西王侯騎馬図屏風.jpg
作者不明   https://www.kobecitymuseum.jp/collection/detail?heritage=365024 パブリック・ドメインリンクによる

ある意味、一番面白かったのがこれ。作者不明。挿絵を観て、西洋画の技法で、図屏風に仕立てたもの。屏風の装丁もかっこいいんだな、これが。

描かれているのは左から、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世、オスマン帝国のスルタン(ムラト2世)、モスクワ大公(イワン雷帝)、タタール大汗と、割と同世代の王様。

 

 

参考

前期展示

nimben.hatenablog.com

 

 唐獅子と狛犬の尻尾考

nimben.hatenablog.com

 

 唐招提寺御影堂を移設して展示したに等しいレベルの東山魁夷展2018

nimben.hatenablog.com

 

絵を浴びるといえば、ミュシャ

nimben.hatenablog.com