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見たものと、読んだもの

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柳沼行『ふたつのスピカ』コミックフラッパー(全16巻)

宇宙飛行士になるための国立東京宇宙学校に通う5人の学生が、それぞれにもつあらかじめ失われたもの、それを真正面から受け入れて、前に歩み出す群像劇。 温かい嗚咽してしまった描写がいくつかあった。それだけこころのやらかいところに触れた上で、上を向…

佐々木忠次『闘うバレエ』文春文庫

東京バレエ団創始者の佐々木忠次の自伝 表紙はギエム。 闘うバレエ―素顔のスターとカンパニーの物語 (文春文庫) 作者: 佐々木忠次 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2009/05/08 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 10回 この商品を含むブログ (13件) を見…

月刊アフタヌーン 2016年7月号:今回の掘り出し物:『コール』(こまねずみ)

四季賞春特別賞の『コール』がいい。さりげない伏線も、リアリティも、人物の大小の構図も。もうちょっと破綻しててもいいくらいの完成度。ちょっと詰め込みすぎた感があるくらいか。短編上手だと、逆に長編がどうなるか想像しづらい場合があるが、次回作楽…

『重版出来』TBSドラマ第7話/原作漫画

「concession speech」というのがある。アメリカの大統領選などでの「スピーチ」であるというと勝利宣言のようだが、その逆で、敗北宣言だ。敗北宣言をきちんと言える人間を、ぼくは信頼する。 この重版出来第7話は、そういう物語だ。 www.tbs.co.jp 沼田さ…

岩明均『ヒストリエ』(1-9巻)

紀元前4世紀のマケドニアを舞台に、実在したエウメネスを主人公にした歴史漫画。 この時代のことはまったくといっていいほど知らないので、ワクワクしながら読んだ。 [まとめ買い] ヒストリエ(アフタヌーンコミックス) 作者: 岩明均 メディア: Kindle版 …

桜井画門『亜人』8巻

「デタラメ人間の万国ビックリショー」の新パターンはこれですか。(褒めています) 佐藤のアクションシーンが斬新! 亜人(8) (アフタヌーンコミックス) 作者: 桜井画門 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/05/06 メディア: Kindle版 この商品を含むブ…

逢坂八代『瑠璃宮夢幻古物店』

アンティークなものが、呪具として、買ったひとに良かったり悪かったりな影響を与える。それを販売する古物商瑠璃宮を中心とした物語。まだ完結おらず、現在4巻まででている。 波津彬子『雨柳堂夢咄』や川原由美子『観用少女』がお好きなら、お気に召すかも…

kindleで雑誌を買って、kindle for Macで閲覧してみた感想

ゴールデンウイークのセールで、雑誌99円というのをやっていたので、お試しで買ってみた。あたりまえながら、現在の号よりも前のものを安価に提供というもの。 確認対象はこちら。 メンズクラブ 2016年 05月号 [雑誌] 作者: ハースト婦人画報社 出版社/メー…

三部けい『僕だけがいない街』(8巻/完結)

コミック版の完結。アニメ版とは異なる。個人的にはコミック版の方が好き。 僕だけがいない街(8)<僕だけがいない街> (角川コミックス・エース) 作者: 三部けい 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店 発売日: 2016/04/27 メディア: Kindle版 この商品を含む…

雨隠ギド『甘々と稲妻』1−6巻(連載継続中)/講談社

丁寧。 妻を亡くしたシングルファーザーの高校教師とその娘が、その学校の女子高校生に料理を習うお話。 とだけ書くと、高校教師ものの恋愛なのかとか、料理の作り方コミックエッセイ的なものなのかとか、いろいろ妄想が湧くかもしれませんが、ちょっと待っ…

東畑開人『野の医者は笑う』誠信書房2015

ハードボイルド室町時代の著者の高野さんのツイッターで面白かったという感想を読み、購入。 久しぶりに原稿を書くつもりが、東畑開人『野の医者は笑う 心の治療とは何か?』(誠信書房)を読み始めたらどうにも止まらず、一気読みしてしまった。今年読んだ…

Kindle Oasis が発売されたが、そそらない。

ウワサのあいつが発売された。新世代Kindleである。 www.amazon.co.jp AmazonはKindleをどういう製品として位置付けようとしているのか、わたしにはよくわからなくなってきている。 現行のKindleに対する不満 以下のような不満をわたしはもっていて、Kindle …

羽海野チカ『三月のライオン』

海の地下って、どれだけネガティブなところまで地球を掘り進んでいくのだろう。 そして地上に出て、ふっくらした厚い食パンに一生懸命探した四葉のクローバーとたぶんちょっとザラメっぽくなっているハチミツをつけて、愛だ恋だという意味ではなく好きな相手…

児玉哲彦『人工知能は私たちを滅ぼすのか』ダイヤモンド社2016

人工知能について歴史を踏まえて俯瞰するのによい作品。 キリスト教的なものを補助線としてストーリー展開をするので、オカルティックに感じる向きもあるかもしれない。そこは筆者も自覚があるようなので、暴走しないように冷静に抑えた感じになっている。た…

落合陽一『魔法の世紀』PLANETS/2015

たまにこういう本を読まないとダメだなあ、と感じた。 学者、アーティストの視座からの展望なので、日頃いるビジネスレベルよりも遠いところを見ているから、とても面白い。 魔法の世紀 作者: 落合陽一 出版社/メーカー: PLANETS 発売日: 2015/11/30 メディ…

吉田秋生『BANANA FISH』

ぼくにとっての吉田秋生の最高傑作。 NY。LA。ベトナム帰還兵。麻薬。少年娼婦。ストリートキッズ。殺人。強姦。フレンチマフィアとチャイニーズマフィア。どれをとってもきらびやかなドラマになるものを詰め込んでいる。サスペンスとアクションでページを繰…

W.H. Auden"Twelve Songs"

「立ちあがってたたみなさい君の悲嘆の地図を」 『海街Diary』6巻の『地図にない場所』編で、糸さんがいうセリフ。 海街diary 6 四月になれば彼女は (flowers コミックス) 作者: 吉田秋生 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2014/10/20 メディア: Kindle版 …

吉田秋生『海街Diary』第1−7巻

第7巻が出てきたので既刊も含めて一気読みした。 『海街Diary』って、落語なんだよね、「人の業を肯定する」という意味で。 海街diary 7 あの日の青空 (フラワーコミックス) 作者: 吉田秋生 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2016/01/08 メディア: コミック…

デジタルコミックの可能性のひとつ、サントリー鏡月の場合

浅野いにお、おもしろい! 基本デザインは一緒だが、とある工夫をすることで、読み込む度に内容が変わって見えるという手法。数パターンあります。 ご一読あれ。 (注:2020年12月、確認したらサイトがなくなっていた) 浦沢直樹が、キャラに演技をつける時は…

高野秀行・清水克行『世界の辺境とハードボイルド室町時代』2015/集英社インターナショナル

本を読んで、目からウロコが落ちることが楽しい人と、自分が言っていることが正しいことを証明してくれるのが楽しい人と二種類あるとおもう。前者派の私にはたまらない。 世界の辺境とハードボイルド室町時代 作者: 高野秀行,清水克行 出版社/メーカー: 集英…

前野隆司『無意識の整え方』2016/ワニ・ブックス

整うかどうかは別として、無意識と常に関わりあっている人がどう考えているのかが抽出されている対談本として読んだ。 人生が変わる! 無意識の整え方 - 身体も心も運命もなぜかうまく動きだす30の習慣 - (ワニプラス) 作者: 前野隆司 出版社/メーカー: ワニ…

エリック・シュミット他『How Google Works』2014

「こんな風にGoogleはやってる」とも「こんな風にGoogleはうまくいっている」解釈できるタイトル。実は今ひとつピンとこなかった。2014年の出版。もっと古びているかと思ったら、そうでもなかった。 How Google Works 作者: エリック・シュミット,ジョナサン…

石川善樹『疲れない脳を作る生活習慣』プレジデント社

マインドフルネス入門として、よいまとめ。 疲れない脳をつくる生活習慣―働く人のためのマインドフルネス講座 作者: 石川善樹 出版社/メーカー: プレジデント社 発売日: 2016/01/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る これ系の本はKindleで買いた…

乃至政彦『戦国の陣形』講談社現代新書

鶴翼の陣形と、魚鱗の陣形、本当はどんなの? 戦国の陣形 (講談社現代新書) 作者: 乃至政彦 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/01/20 メディア: 新書 この商品を含むブログ (2件) を見る 66。巻末に記された文献の数だ。思い込みからの脱洗脳のためには…

本の読みやすさという、胡散臭い言葉

本の読みやすさには二通りある。 本の内容を受け取る読者側の責の話と、本自体の可読性という作者側の責の話。 多くの場合、前者のつもりで後者の話をしている場合が多い気がする。 読みづらさの原因 読者側は、文章が読みにくいというときには気をつけない…

三部けい『僕だけがいない街』(1−7巻)

ループものなのだが、かなりの変化球で、とてもワクワクする。 僕だけがいない街 コミック 1-7巻セット 作者: 三部けい 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2016/01/12 メディア: コミック この商品を含むブログを見る ここからもうネタバレ。

伊坂幸太郎『グラスホッパー』

読んだことがなかったが、kindleで安く出ていたので。なるほど、人気な理由がわかる読みやすさ。 グラスホッパー 角川文庫 作者: 伊坂幸太郎 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店 発売日: 2012/09/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 寺原…

小説脳を取り戻す

いまは、久びさに小説を読んでいる。小説脳は、世界を構築する力だと思っている。 ゼロからつくれれば、それは作家の力。読み手も書かれているものを脳内で再生する能力が必要だ。それは論理性だけだもだめで、その世界の、そよぐ風、木々の緑、どぶの臭気な…

中島らも『ガダラの豚』

amazon kindleで1巻が安売りしていたので再読。中島らも『ガダラの豚』全3巻セット (集英社文庫)作者: 中島らも出版社/メーカー: 集英社発売日: 2012/02/01メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 10回この商品を含むブログを見る しっかしどうなんだろうな、い…

読書感想が書きづらい4パターンについて

本を読んだ後、感想を書くのが難しいのには、いくつかパターンがある。 読むに値しなかったと後悔するが、罵倒するほどでもない 読むに値しなかったと後悔し、罵倒したいが、そんなことはしたくない 読むに値したが、良い意味で暇つぶしとしてであり、「あー…