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見たものと、読んだもの

キャンプにハマりつつある理由

忙しいという字は、心(りっしんべん)を亡くすと書く。

心を亡くすと言っても、実際には死んでいない。脳みその稼働するためのパワーがなくなることだ。なくなると、あんまり複雑なことや、多くのことを考えるのは難しくなる。難しいなら、やれることは簡単なことに限られる。

 

ということで、ゆるキャン△だ。

yurucamp.jp

www.tv-tokyo.co.jp

 

なんと言っても、悪い人は出てこない。安全な世界で、誰かを脅かそうという人はいない。その中で、のほほんと、ゆっくりまったり、時が過ぎていく。

実写版もアニメ版もだが、そういう空気感があるので、特になんということもなく見ていられるのがありがたい。

 

実はキャンプは、多くの人がそうであるように、夏に、グループで、車でするものだと思っていた。冬に、ソロで、徒歩で行うものだとは考えていなかったのだ。

私がキャンプをしていたのは小学生とか中学生時代だったので、道具もいろいろ進化している。メスティンとか、吊り下げ型テントとか、まるっきり知らない単語でいっぱいだった。

 

実際にやってみたいなと実行に移したのは、昨年の秋口。キャンプというよりもチェアリング。海辺の公園の木陰で、ヘリノックスのチェアに座るというところから。

暑過ぎない時に、海を、遠くを見ながら風に揺られるというのは、新鮮な感動だった。

地べたの座るのではなく、椅子に座ってそれをするというのも、私には新しかったし、快適だった。

海辺では、テントやタープを張っている人もいた。そうすると、プライバシーが守れる。そうすると、買って試したくなる、という順序だ。

 

コロナが蔓延している時期でもあるので、なるべく人と離れたいとなると、このキャンプってやつは良い。

 

2年くらい前からそう思う人が増えて、キャンプブームになったらしいということはわかったが、流行るにはそれに見合う理由があるもんだなと、もうちょっと早く飛びつけば良かったと思った。

2022年面白かった美術展

コロナが落ち着いて来つつあるので、ちょっとは行けた。

2021年はどこにも行かなかった(行けなかった)ことを考えると、良化。

 

フェルメール

知識的に面白いなあと思ったのは、春のフェルメールフェルメール『窓辺で手紙を読む女』の修復前後を見ることができたのは楽しかった。

 

nimben.hatenablog.com

 

昔はそんなにフェルメールに惹かれなかったのに、どうしたことか。適度な謎がそそるのか?

www.rijksmuseum.nl

来年早々にアムステルダム美術館でフェルメール展をやるのだけれど、遠いけど行きたいなあと思うほど。2018年の上野の森美術館でのフェルメール展よりも多いんじゃなかろうか。

 

リヒター

名前は聞くけど、よくわからなかったのだが、まるッと見ることができたので概要が掴めてきたのは嬉しい。

nimben.hatenablog.com

 

大型の作品が多かったのもあり、迫力を感じた。

『ビルケナウ』はどう解釈というか、咀嚼していいのか、いまだにわからないのだけれど。

ロスコーもそうだけど、何に執着しているのか対象はわからないけれど、執着しているという熱量だけはビンビンに感じるので、抽象画って面白い。言語化できないモヤモヤを解き明かすというか、それを見て、自分が知らない自分の感じ方に気づくというか。

 

オールスター:トーハク150年

nimben.hatenablog.com

 

国宝がこんなに一堂に見られるのは楽しい。

やはり、金箔が背景にある絵画が好きだなあ。狩野派、長谷川派、琳派、そして若冲

サントリー美術館『京都・智積院の名宝』は、ほぼ同時期開催のトーハクにお客が取られたのか、人も多くなく、じっくり等伯を見れたので眼福でした。

美術館を超えて、自分で線を引くのって、面白いよねぇ。

 

今年は、前後期で展示替えがたくさんあるものが多かった。

『国宝 東京国立博物館のすべて』『日本美術をひも解く』なんかは、目玉が変わるくらいの。

そして、前期後期両方見る場合の割引については、やっぱり考えてほしいなあ。

もっと気軽に行けるので。まあ、そんなにいくなら会員になれ、という話かもしれないけれど。

 

2023年

今年はあんまり彫刻に触れる機会がなかったので、来年はたくさん見れるといいな。

#空也さんが彫刻系では一番良かった。

 

テートやルーブルの作品が来るようだけど、まだ、彫刻系はアンテナに引っかかっていないので、もうちょっと待ちなのか、美術館ではなく、教会やお寺さんに行けということなのか。はてさて。

国外だと、アムステルダム美術館のフェルメール展がすごいんだけどね。行きたい。

 

さて、来年は何を見ましょうか?

最後に、皆さんのご健康とご多幸をお祈りして。

 

付録:今年行った美術展

nimben.hatenablog.com

 

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京都・智積院の名宝 @サントリー美術館

トーハクの国宝展繋がりで、長谷川派の図屏風があると聞き、参上。

長谷川等伯やその息子の久蔵の図屏風(国宝)も良かったが、全く予期していなかった堂本印象の図屏風も良かった。こういう良き出会いって素敵。

 

長谷川等伯

楓図

Érable entouré d'herbes d'automne (détail) par Hasegawa Tōhaku.jpg
Asie - auteur: Akiyama Terukazu - éditeur: éditions Albert Skira – リンクによる

 

桜図

Cherry-tree.jpg
長谷川久蔵 - Shimizu, Christine: L'art japonais, Flammarion, パブリック・ドメイン, リンクによる

 

松に草花図

Pine tree Flowering plants Chishakuin Tohaku.JPG
長谷川等伯 - Postcard published before 1986, パブリック・ドメイン, リンクによる

 

キンキラキンなのに躍動的で静謐。

世の盛りが満月ならば、その1番の輝きを描こうというものなのに、これから咲いていくような生命力をも感じる。

この壁画や図屏風を肴に、お酒を飲みたい。

 

松林図屏風は以下のように水墨画なので、感じは違う。(東京国立博物館のものなので、サントリーでは展示されていない)

Hasegawa Tohaku - Pine Trees (Shōrin-zu byōbu) - right hand screen.jpg
By Emuseum, パブリック・ドメイン, Link

Hasegawa Tohaku - Pine Trees (Shōrin-zu byōbu) - left hand screen.jpg
By Emuseum, パブリック・ドメイン, Link

 

これも、冬の雪や風に煽られながらも、強く生きているという生命の強さを感じる。

 

堂本印象

『松桜柳図』が、またいい。図屏風だけど等伯とは全く違う色彩の、昭和三十三年の作品。具象画と抽象画の間にあるような。色彩もポップなのに静謐という。

 

 

www.suntory.co.jp

 

長谷川等伯の国宝は三つ。そのうちの二つが展示される

  1. 松に草花図・桜楓図・松に梅図・松に黄蜀葵及菊図
  2. 松に草花図
  3. 松林図

このうち、松林図屏風(#3)は、東京国立博物館の正月展示で有名。

他の2作は、智積院保有。なお、読みは「ちしゃくいん」。「ちせきいん」ではない。(私は間違えてしまった)

来年2023年4月4日に、智積院宝物館ができるので、その間に、初めてお寺さんの外での展示、となる。

 

智積院とは?

真言宗のお寺さん(なので、弘法大師の絵がある)。寺号は根来寺

根来寺といえば、司馬遼太郎『尻啖え孫市』でお馴染み雑賀衆と同じ時代の鉄砲衆である根来衆は、ここを拠点としたことで知られる。根来寺は一度、豊臣秀吉によって壊滅されている(1585年)。高野山に難を逃れた住職の玄宥僧正が、祥雲寺を江戸幕府から譲り受け、再興 (1615年)。

祥雲寺は、3歳で亡くなった息子の菩提を弔うために、1591年に豊臣秀吉が建てた寺。長谷川等伯はの絵は、この祥雲寺のために描いたもの。

 

 

 

東京国立博物館創立150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」@東京国立博物館

概要

場所:東京国立博物館 平成館 特別展示室
期間:2022年10月18日(火) ~ 同年12月11日(日)

作品リスト

概要:150年記念ということで所蔵する国宝89件を全て展示+この150年の振り返り。

 

個人的一押し

尾形光琳風神雷神図屏風』(前期展示。江戸時代18世紀)と

Korin Fujin Raijin.jpg
尾形光琳 (Ogata Korin, 1658 - 1716) - [1] at [2], パブリック・ドメイン, リンクによる

酒井抱一『夏秋草図屏風』(後期展示。江戸時代19世紀)

「風雨草花図」(通称「夏秋草図屏風」) Natu-aki kusa zu byoubu.jpg
 

酒井抱一 - Emuseum, パブリック・ドメイン, リンクによる

 

元々は、建仁寺の図屏風の表と裏。これ、同時展示だったらよかったんだけどな。

 

www.tnm.jp

平安仏画

孔雀明王像 

2019年『原三溪の美術』(横浜美術館)でも目玉になっていた、国宝の『孔雀明王像』(平安時代

Kujaku Myoo.jpg
By 不明 - uwEm0Ca3wrGrww at Google Cultural Institute maximum zoom level, パブリック・ドメイン, Link

同じく国宝の『十六羅漢像』と同時に展示。孔雀王は前期のみ。

結構複雑な造形なのにシンプルに見える。色も結構残っていて、美しい。

 

後期に展示されていた『千手観音像』

ノーマークだった『千手観音像』(平安時代。国宝)も美しかった。煌びやかなはずなのに静謐に見える。

 

Senju Kannon.jpg
不明 - Tokyo National Museum, パブリック・ドメイン, リンクによる

 

普賢菩薩像(平安時代、12世紀)

『名作誕生 つながる日本美術』(2018) でも展示されていた、普賢さん。

 

Fugen Bosatsu.jpg
不明 - Emuseum</>, パブリック・ドメイン, リンクによる

 

 

 

詳しい解説はこちら

tnm-tobunken.tobunken.go.jp

 

地獄草紙

平安時代の絵巻物。地獄を描く。

奈良国立博物館本(原家本)ではなく、東京国立博物館所蔵の安住院本。

雲火霧

Jigoku-Zoshi.jpg
不明 - e国寳, パブリック・ドメイン, リンクによる

 

「雲火霧(うんかむ)」は、殺生、偸盗、邪淫の罪を犯した者などがおちる地獄。罪人たちは、炎の中に投げ込まれ、燃え尽き、蘇生し、また投げ込まれるというループを果てしなくくりかえす。(ループで責苦を繰り返すのは、地獄の特徴っぽい)

cf: 偸盗といえば、芥川龍之介偸盗

この他、髪火流処(はっかるしょ)という、五戒を守っている人に酒を与えて、戒めを破らせたものが落ちる地獄、などが展示されていた。

阿鼻叫喚の阿鼻は無間地獄、叫喚は叫喚地獄のことを指している。

無間地獄は一番の大罪を犯した者が入る地獄で、人間時間で682京年に相当する時間、この責苦を味わうことになる、というような天文学的な壮大な時間と、細かすぎるほどの責苦を受ける人の罪状が同時に描かれることが、なんともいえない。後白河法王が描かせ、蓮華王院三十三間堂宝蔵に納めた『六道絵』の一部だったという話もある。

同時期に表された『餓鬼草子』もすごかった。

これが描かれた平安末期って、どんな時代だったのか。平安末期で後白河法皇が生きていた時代といえば、養和の大飢饉(1181年)(なお、木曾義仲が上洛したのが1183年)があるので、その時の様子が、実は写実的に描かれているのかもしれない。

 

摩耶夫人および天人像

飛鳥時代(7世紀)重要文化財

Periodo asuka, lady maya e tre esseri celesti, VII sec 02.JPG
I, Sailko, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

三名の天人様と一緒に展示。お釈迦様が摩耶夫人の右袖からこんにちはしている。

仏像としては、運慶快慶的な写実的かつ歌舞いているものが好きなのだが、飛鳥時代のこの作品の軽やかさは、とてもあったかい気持ちになって素敵。

法隆寺宝物館で通年展示されているので、この国宝展が終わっても、すぐに見ることができる。

刀剣

今回展示されている国宝89件のうち、日本刀関連(鞘2つを含む)が19件。(21%!)

また、天下五剣のうちの二振り、びじゅチューンでもお馴染み『三日月宗近』、日本刀の東の横綱とも言われ、源頼光酒呑童子の首を刎ねたという伝説を持つ『童子切安綱』(平安時代伯耆安綱)と、が展示されている。

www.tnm.jp

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三日月宗近』は、表も裏も見ることができるという、なかなかレアな機会でした。

 

また、日本刀の西の横綱とされ、包平の中で最高とされる『大包平』(平安時代古備前包平)なども展示されている。

www.tnm.jp

 

雑感

今回のような目玉が展示替えになってしまう場合、回数券的なものを出してもらえないかなあ。

例えば、一回3000円。前期後期券が2 x 3000円=6000円のところ、5000円とか。

2回目に見るときに、展示替えがないものはあまり詳しくは見ないので、滞在時間が、場合によっては倍くらい違うんですよね。

もちろん、今は、瞬殺で予約が埋まる状態で、前期後期券を買っても、枠にはまるように予約が取れない場合のクレーム問題があるよね、というのはわかるんですけど。

 

参考

www.tnm.jp 

この仁王様と、見返り美人は写真を撮ることができました。

 

appendix: 過去に見たもの書いたもの

2016年:風神雷神図屏風(鈴木其一)

nimben.hatenablog.com

2014年:風神雷神図屏風俵屋宗達尾形光琳

www.tnm.jp

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2018年:普賢菩薩像、松林図屏風

nimben.hatenablog.com

 

童子切安綱』:酒呑童子源頼光の話

nimben.hatenablog.com

 

2018年:仁和寺孔雀明王

nimben.hatenablog.com

 

2019年:孔雀明王

nimben.hatenablog.com